自動車やプロダクトなどの機械製品を設計するエンジニアの仕事に興味があるという人は多いのではないかと思います。機械設計エンジニアは、機械製造の工程のなかで大事な役割を担っています。しかし、未経験の人などは機械設計エンジニアになるにはどうすればいいのか、どんな知識が求められるのかがわからないかもしれません。

そこで、これから機械設計エンジニアを目指そうかと考えている人に対して、その仕事内容や必要な知識やスキル、年収、おすすめの資格、やりがいなどを解説します。機械設計エンジニアになる方法なども解説しているので、ぜひ参考にしてください。

機械設計エンジニアとは

機械設計エンジニアとはどのような仕事なのでしょうか。

機械設計エンジニアの概要

厚生労働省の職業情報紹介サイトを見ると、「市場の様々なニーズに応え、最新の技術を駆使して、機械製品を開発・設計する」仕事であると説明されています。車や船のような移動用機械や産業用機械、電子機器、工作機械、建設機械など、幅広い機械の設計・開発を行うのが機械設計エンジニアなのです。

顧客や社内からの要望を聞き、企画を作成し、どのような機械を作るかを決定します。その後、機械の動きや構造を検討し図面を作成するとともに、必要な資材や部品なども用意し、設計した機械を作りシミュレーションを繰り返しながら調整を行います。設計だけでなく組み立てや加工などにも携わります。

コストや安全性、耐久性なども踏まえての設計が必要であり、専門的な知識が求められる仕事です。

機械設計エンジニアは人手不足?

近年、機械設計エンジニアは人手不足といわれることがありますが、これは本当なのでしょうか。

まず、職業情報提供サイトを見ると、有効求人倍率は2.96となっており、人手が不足していることがわかります。また、経済産業省の「理工系人材需給状況に関する調査結果概要」によると、「現在の業務で必要とする分野と大学で学んだ分野との比較」では、技術系の職種において機械工学(設計、エンジン、材料、流体等)に関する分野が企業からのニーズが高いことがわかります。

このことから、企業の求めるレベルの機械工学の学習をしている人が足りていないことがわかります。機械設計エンジニアは現在の日本では不足しているのです。そして、将来も不足することが予想されます。

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機械設計エンジニアの仕事内容

機械設計エンジニアの仕事の流れ、詳しい仕事内容を紹介します。

企画・構想設計

機械設計エンジニアは、クライアントや社内からの要望をもとに、まず企画・構想設計を行います。

社内のプロジェクトチームで相談しながら、どのようなコンセプトの機械を作るかを検討します。コンセプト作りでは、市場調査のデータや競合分析、アンケートなどをもとに、課題を最適な形で解決できる機械を考えます。そして、サイズや機能、デザイン、価格、利益目標などを決定していきます。

機械のコンセプトが固まったら、コンセプトを実現するための動きや構造などを詰めていきます。さらに、用いる技術や必要な資材をコストや安全性も踏まえながら洗い出していきます。

基本設計

基本設計では、構想設計で考えた機械の仕様を具体的に設計図に起こしていきます。基本設計を行うことで、機械の全体像を把握できますし、製造が可能かや、必要な強度をクリアできるかなども明確にすることができます。

設計では、外観のサイズや機械内部の機構についても部品のサイズや配置などを設計図に落とし込んでいきます。部品をどのようにつなぐか、動きのなかで干渉が起こらないか、コストは予算内であるか、材料には何を利用するかなどを、設計図を作成しながら確認していきます。

また、設計した動きや素材でシミュレーションを行い、CAEなどのソフトを使って強度計算も行います。

詳細設計

詳細設計では、基本設計で作成した設計図をもとに、機械製造ができる段階までより細かく詰めていきます。詳細設計を行うことで、機械の製造に必要な部品の寸法や必要な加工を具体化することができます。

詳細設計では、機械を構成する各部品の寸法を部品図に記載していきます。可能な最大値や最小値である寸法公差、表面性状、加工方法、材質、数量などを部品図に細かく書いていきます。また、組立図で、どの位置にどの部品を配置するか、どのように組み立てるかなど、全体像をまとめます。

詳細設計では、部品の材料や加工方法なども検討します。求められる条件に材料が合っているかや、加工が可能な素材かなど、実際に加工・製造作業で起こる問題に対してもチェックを行います。

試作・評価

設計図が出来上がり、クライアントやチーム、上長の確認が終わったら試作を行い評価していきます。

設計図通りに作ってみて、動きや機能に齟齬がないか、性能や機能は想定通りかを確認し、問題がある場合には修正していきます。また、量産に向けて効率的な設計になっているかという生産性もチェックします。

次の工程に渡す前の最終チェックになるので、慎重に確認を行うことが求められます。

機械設計エンジニアに求められる知識やスキル

機械設計エンジニアは、機械の設計においては動き、構造、素材、加工など幅広い視点からの設計が求められます。そのためには、どのような知識やスキルが必要なのでしょうか。

工学の知識

機械設計エンジニアには、工学についての様々な知識が求められます。

代表的なものとしては、材料力学・機械力学・流体力学・熱力学の4力学の知識があります。例えば、材料力学は機械の強度を計算するために必要ですし、機械力学は機械を動かした際にどのような力が生じるのかを考えるのに必要です。こういった力学の基本的な知識は機械の設計に必須であり、計算の仕方なども理解しておかなくてはなりません。

また、機械と電子回路を組み合わせるためのメカトロニクスや、機械が自律的に動きを実行できるように制御するための制御工学などの知識も必要になります。

機械材料の知識

機械設計を行うときには、製品に使用する材料の知識が必要になります。

機械を作る際には、金属や非金属の材料を用います。金属には炭素鋼や合金鉄、鋳鉄などの鉄、アルミニウムやチタンなどの非鉄素材があります。さらに、樹脂やセラミックス、ガラス、ゴムなどの非金属材料などが用いられます。

機械製造においては、材料の特性を知ることでどの材料が最適なのか、どのような加工が必要なのかを知ることができます。そして、その際にはコストや耐久性なども踏まえて設計をしていく必要があります。だからこそ、機械材料についても熟知していなくてはならないのです。

電気・電子の知識

機械設計エンジニアには電気や電子の知識も求められます。

現代に作られる機械の多くは、電子回路や電気を用いたものが多いです。特定の指令を入力することで機械にその行動をさせるために電子回路や電気が用いられるのです。さらに、IoTやAIなどのように、インターネットや最先端の技術と組み合わされることも増えました。

そういった機械を作るときには、電気技術者と連携を取らなくてはなりません。しかし、電気・電子の知識がなくてはうまく連携が取れないということになってしまうので、電気や電子の知識が必要なのです。

ソフトウェアの操作スキル

ソフトウェアの操作スキルも機械設計エンジニアには必要です。

機械設計エンジニアは基本設計や詳細設計などにおいて設計図を作成しますが、その際にはCADやCAEを利用して設計を行います。こういったソフトウェアを利用することで、高精度な図面を作成でき、コンピューター上で強度計算や重量計算などを行えますし、細かな調整などの手間をなくすことができます。

CADやCAEには2次元だけでなく、3次元で設計できるものがあります。また、近年ではAIを利用したソフトウェアも開発されています。もし、こういったソフトウェアを操作できるスキルがあれば評価につながるでしょう。

コミュニケーション力

機械設計エンジニアにはコミュニケーション力も求められます。

機械の設計作業自体はエンジニアひとりで行うことも多いですが、チーム内での要件のすり合わせや共有、営業や次の工程の部門との連携なども必要なのでコミュニケーション力が必要なのです。また、クライアントへのヒアリングや関係会社との交渉など、社外とのコミュニケーションが必要な場面もあります。

コミュニケーションに問題があると、製品に問題が発生する可能性やクライアントとトラブルが起こる可能性があるので、しっかりと身につけなくてはなりません。

機械設計エンジニアの年収事情

機械設計エンジニアの仕事はどれくらいの年収を得られるのでしょうか。

平均年収

職業情報紹介サイトを見ると、機械設計エンジニアの平均年収は612.4万円とされています。国税庁発表の日本の平均給与は458万円であり、男性のみだと563万円となっており、機械設計エンジニアの年収は平均よりも高いことがわかります。

また、多くが正規の職員で占められており、安定した仕事であることがわかります。ただし、「収入は比較的安定しているが、業界の特性として市況の影響を受けることもある」ともされています。収入が下がるリスクもあるようです。

年収分布

機械設計エンジニアの年収が高いことはわかりましたが、年齢別にみるとどうでしょうか。

「年齢別分布」を見ると、20~24歳で347.09万円ですが、そこから年齢ごとに大きく増えていき、もっとも年収が高くなるのは55~59歳であり、769.58万円となっています。機械設計エンジニアは経験を積んでいくことで、知識やスキルが上がっていくことから年収が高まると思われます。

また、70歳以上でも384.47万円となっており、老後にも高い年収が得られる仕事だとわかります。ほかにも、「所定内給与額別の人数割合」を見ると、月額の給与が40~44.9万円得ている人は9.82%いることがわかります。多くが高い給与をもらえる、水準が高い職業といえるでしょう。

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機械設計エンジニアにおすすめの資格

機械設計エンジニアは資格を取得することで知識やスキル、能力を証明できます。就職や転職、昇進などにも有利になる可能性があるのでチェックしておきましょう。ここでは、おすすめの資格を紹介します。

機械設計技術者試験

機械設計技術者試験は、平成7年から日本機械設計工業会が実施している民間の技術力認定試験です。安全かつ効率よく機械を設計する総合能力を認定するものです。

資格には1、2、3級がありますが、3級は1級や2級のレベルに満たない人のための初級の試験です。3級以外は実務経験が必要になります。それぞれの試験の内容と実務経験年数は以下です。

1級

機械設計に関わる管理・情報等に対する知識や、機械設計の基本となる計算課題を含む知識などの機械設計基礎課題、管理者として必要な環境・安全に対する知識などが出題されます。設計実務に関わる計算や小論文などもあります。

受験資格 最終学歴 直接受験
(※要審査)
2級取得者
工学系 大学(院)・高専専攻科・高度専門士・職業能力開発大学校(旧職業訓練大学校) 5年 2級取得後、
次年度から受験可能
短大・高専・専門学校・職業能力開発短期大学(旧職業訓練短期大学校)・「職業能力開発校(旧職業訓練校)(高校卒業後、2年制)」 7年
その他(上記以外) 10年

2級

2級の試験内容としては、機械設計分野や熱・流体分野、材料・加工分野などの4力学に加えて、制御工学、デジタル制御などのメカトロニクスや環境・安全の分野が範囲となります。

受験資格

最終学歴

直接受験 3級合格者
工学系 大学(院)・高専専攻科・高度専門士・職業能力開発大学校(旧職業訓練大学校) 3年 2年
短大・高専・専門学校・職業能力開発短期大学(旧職業訓練短期大学校)・「職業能力開発校(旧職業訓練校)(高校卒業後、2年制)」

5年

3年(※1)

その他(上記以外) 7年 4年(※1)

(※1)令和5年度試験より「工学系短大・高専など卒業」を4年から3年、「その他」を6年から4年にそれぞれ短縮されました。

CAD利用技術者検定

CAD利用技術者検定は、CADを利用するエンジニアや学生が身につけておくべき知識と技能を証明できる民間の試験です。

3次元CADと2次元CADの試験があります。3次元CADでは1級、準1級、2級があり、2次元CADでは1級、2級、基礎があり、1級合格で高度な作図力を証明することができます。

それぞれ、以下のような試験内容、受験資格となっています。

3次元CAD

2級 受験資格 特になし
試験内容 ■3次元CADの概念
3次元CADとは、3次元CADの活用、3次元CADの歴史、3次元モデルのデータ構造、3次元モデルの構成、表示技術

■3次元CADの機能と実用的モデリング手法
3次元CADによる設計、モデリング機能、実用化の事例、複合化したコマンド、検査・計測・解析の方法、モデリング手法、アセンブリモデリング、実用上の注意点

■3次元CADデータの管理と周辺知識
プロジェクト管理、PDM、コンピュータシステムの構成、CADとネットワーク知識、情報セキュリティ

■3次元CADデータの活用
CAE、CAM、CAT、CG、3Dプリンター、DMU、コラボレーション、3次元CADデータの応用例

順1級 受験資格 2級有資格者
試験内容 ■CADリテラシー、形状認識能力
・文章による手順の指示に従い、パーツモデルを作成する問題。第三者との口頭によるやり取りや手書き図面情報の伝達をイメージし、的確にコマンドを使用できるかを問う。
・2次元図面からパーツモデルを作成する問題。2次元図面から3次元空間上の形状認識が正確にできるかを問う。

■2次元図面からのパーツモデリング能力
・2次元図面からパーツモデルを作成する問題。実務の基本的な能力を総合的に問う。

1級 受験資格 2級または準1級有資格者
試験内容 ■CADリテラシー、形状認識能力
・文章による手順の指示に従い、パーツモデルを作成する問題。第三者との口頭によるやり取りや手書き図面情報の伝達をイメージし、的確にコマンドを使用できるかを問う。
・2次元図面からパーツモデルを作成する問題。2次元図面から3次元空間上の形状認識が正確にできるかを問う。

■アセンブリモデリング能力
・パーツモデルを作成し、それらを組み立ててアセンブリモデルを作成する問題。パーツモデルを正しく組み立てることができるかを問う。

■2次元図面からのパーツモデリング能力
・2次元図面からパーツモデルを作成する問題。実務の基本的な能力を総合的に問う。

2次元CAD

基礎 受験資格 特になし
試験内容 ・CADシステムの知識と利用
・CADシステムのプラットフォーム
・製図の知識
・図形
2級 受験資格 特になし
試験内容 ■CADシステム分野
・CADシステムの概要と機能
・CADシステムの基本機能
・CADの作図データ
・CADシステムとハードウェア
・CADシステムとソフトウェア
・ネットワークの知識
・情報セキュリティと知的財産
・CADシステムの運用・管理と課題
・3次元CADの基礎知識

■製図分野
・製図一般
・製図の原理と表現方法
・製図における図形の表現方

1級 受験資格 2次元CAD利用技術者試験2級
CADシステムを利用した設計・製図業務に従事して1年以上の実務経験、または1年以上の就学経験を有する
試験内容 ■実技試験
・機構部品の作図
・適切な数値(カタログ、要目表など)からの作図
・投影図からの作図

■筆記試験
・機械製図の知識

各分野5割以上、および総合が7割以上

技術士(機械部門)

技術士とは、公益社団法人日本技術士会による国家資格です。

「技術士」とは、「国によって科学技術に関する高度な知識と応用能力が認められた技術者で、科学技術の応用面に携わる技術者にとって最も権威のある国家資格」とされています。様々な部門で技術士が機械設計エンジニアの場合には、機械部門を受けるのがよいでしょう。

技術士試験は一次試験と二次試験があります。二次試験では必須科目と選択科目があり、選択科目は機械設計、材料強度・信頼性、機構ダイナミクス・制御、熱・動力エネルギー機器、流体機器、加工・生産システム・産業機械から2つ選択します。この筆記試験の合格者に対して口頭試験があります。

機械設計エンジニアのやりがい

製造業で働く電気・機械系のエンジニアとソフトウェア系のエンジニアなどへのアンケート調査では、電気・機械系エンジニアは「給与・待遇よりも仕事のやりがいを大事にしたい」という考え方について29.7%が“当てはまる”であり、ほかよりも割合が高い結果となりました。

つまり、機械設計エンジニアになる人はやりがいを重視していることがわかります。機械設計エンジニアではどのようなやりがいがあるのでしょうか。

まず、機械設計エンジニアのやりがいとしては、自身が設計したものが形になり世に出るということがあげられるでしょう。設計したものがユーザーの手に渡り、大きな影響を与えられるというのはモノづくりの仕事の醍醐味です。そして、モノをチームで作り上げるときの達成感もやりがいになるでしょう。

また、クリエイティビティを発揮できるというのもやりがいになります。機械設計の仕事では、課題を解決するための最適な機械の設計を考えます。自身の創造力を最大限に生かして仕事をするというのは、大きなやりがいになるはずです。知的好奇心も刺激されますし、業務自体に楽しさを感じられる可能性もあるでしょう。

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未経験から機械設計エンジニアになる方法

未経験から機械設計エンジニアになるにはどうすればよいでしょうか。

学校で学ぶ

未経験から機械設計エンジニアになるには学校に通うのがよいかもしれません。これまでに工学や機械の知識を学んだことがないという人は、基本的な知識が不足しているので機械設計の仕事を行うのは難しいでしょう。

まずは学校で力学や工学について基礎を学ぶことで、業務で必要になる知識を得られます。また、設計やCADの操作などについても学校で教えてもらえるはずです。

専門学校や高専、大学などでは、企業とのネットワークがある学校もあり、就職先の斡旋などをしてもらえる可能性があります。こういった就職先では、同じ学校からのOBなどもいるので入社後も働きやすいでしょう。

就職・転職する

未経験から機械設計エンジニアになるには、いきなり就職や転職をするという方法もあります。

機械設計エンジニアの求人のなかには、未経験可の求人があります。こういった企業では、未経験者を採用して研修などを行いイチから人材育成をしています。未経験者であっても実務を通してより実践的な機械設計をできるようになるでしょう。

こういった企業への就職や転職を考える場合には、エージェントの利用がおすすめです。エージェントは企業の情報を豊富に持っていますし、各企業の内情や社風などについても精通しており自身に合った企業に就職ができるでしょう。また、転職エージェント利用者は、非利用者と比べて転職時の年収アップ成功率が高いというデータもあります。

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機械設計エンジニアの仕事内容、求められる知識やスキル、年収、資格について解説してきました。機械設計エンジニアは人手不足ということもあり、需要の大きい職業です。高い年収や安定性も期待できますし、興味のある人は目指してみてはいかがでしょうか。

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