近年、半導体不足が叫ばれていますが、半導体エンジニアもまた不足しているといわれています。これから半導体エンジニアを目指す方や転職をしようかと考えている人も多いと思います。そのような人は半導体エンジニアの年収が気になるのではないでしょうか。

ここでは、半導体エンジニアの年収や将来性、高い年収を得るためのスキルや年収を上げるための方法を解説します。

半導体エンジニアとは

まず、半導体エンジニアとはどのような仕事内容や労働環境なのかを紹介します。

半導体エンジニアの仕事内容

半導体エンジニアの仕事内容としては、半導体チップの設計や開発、半導体が使われているデバイスの設計や品質管理など様々です。

仕事内容によって、半導体エンジニアの職種は様々なものに分かれています。半導体チップのレイアウトや回路の設計、システム設計を行う半導体設計エンジニア、半導体が組み込まれたデバイスの設計・試作・評価・解析などを行う半導体デバイスエンジニア、半導体製造のラインの設計、工程を最適化する半導体プロセスエンジニアなどがあります。

こういった半導体エンジニアの仕事では、プログラミングスキルやシステム設計の知識、CADやCAMなどのソフトウェアを操作する技術が求められます。

半導体に関わる仕事としては他に半導体製造の仕事がありますが、こちらは設計ではなく、シリコンなどの元素半導体を材料にして半導体工場で半導体の量産、組み立て、検査など、半導体自体の製造を行います。

半導体エンジニアの労働環境

半導体エンジニアの労働環境はどのようなものでしょうか。

厚生労働省の「職業情報提供サイト」によると、半導体エンジニアの人口は全国で305,190人となっています。平均年齢は43.3歳です。日本の労働者の平均年齢は43.9歳であることを考えると、比較的若い環境といえるでしょう。その多くが正規職員となっています。

また、労働時間は月間160時間であり、あまり残業などはないことがわかります。

半導体エンジニアの年収

半導体エンジニアの年収はどれくらいなのでしょうか。

平均年収

「職業情報提供サイト」を見ると、半導体エンジニアの平均年収は688.2万円となっています。国税庁の調査によると、日本の平均年収は461万円であり、男性のみでも567万円となっています。半導体エンジニアの年収は日本の中でも高額であることがわかります。

また、毎日新聞によると、「半導体業界への転職者の平均年収は530万円」ということです。ただし、これは未経験の転職者なども含むので低くなっている可能性があります。

年齢別の年収

半導体エンジニアの年収は年齢ごとにどのように変わるのでしょうか。

「職業情報提供サイト」の「年齢別の年収グラフ」を見ると、半導体エンジニアは20~24歳の平均年収は356.5万円ですが、年齢を重ねるごとに大きく上がっていき、最も給与が高い50~54歳では841.26万円となっています。年収が上がる割合は他の職種と比べても大きく、長く続けることで高額な年収が期待できる仕事といえるでしょう。

また、55~59歳の840.42万円からは年収が下がっていきますが、60~64歳で568.3万円、65~69歳で543.29万円、70歳以上でも438.89万円となっています。このことから、半導体エンジニアは、年齢を経てからも一定の年収が得られる仕事といえるでしょう。

給与分布

次に、給与の分布を確認します。「所定内給与額別の人数割合」を見ると、月額で40~44.9万円もらっている人で13.17%います。このことから、業界全体の給与水準が高いことが伺えます。

また、40~49.9万円以上に高額になると割合は下がっていきますが、60~69.9万円の人で増加し、6.7%となります。70~79.9万円の人も1.78%おり、高額な給与が期待できる仕事といえるでしょう。ちなみに、100~119.9万円の人も0.185%存在しています。

他のエンジニア職との比較

エンジニア職には様々なものがあります。例えば、半導体エンジニア以外のエンジニア職としては、機械設計エンジニアや電子機器エンジニア、組み込みエンジニアなどが挙げられます。これらのエンジニア職と比べて、半導体エンジニアの年収はどれくらいなのでしょうか。

厚生労働省の「職業情報提供サイト」の各職種の平均年収を見ると以下のようになります。

半導体エンジニア 688.2万円
機械設計エンジニア 612.4万円
電子機器エンジニア 688.2万円
組み込みエンジニア 557.6万円

これを見ると、半導体エンジニアの年収は他のエンジニア職と比べても、同等かそれ以上であることがわかります。

半導体エンジニアの将来性

半導体エンジニアは高水準の年収が期待できる職業だということがわかりましたが、将来的にも半導体エンジニアの需要は続き、高い年収が続くのでしょうか。ここでは、半導体エンジニアの将来性について解説します。

半導体の需要は続く

半導体自体の将来の需要はどのようになるのでしょうか。

微細加工研究所の湯之上隆氏は、人類の進歩にともなって半導体市場は今後も大きくなり、2020年の4331億ドルから成長し続け、2050年には2.5倍の7500億ドルになると予測しています

また、日本は半導体のシェア拡大を目指しています。2024年2月には半導体の受託製造で世界1位のシェアである台湾メーカー「TSMC」の熊本県への誘致に成功しました。日本政府は、この工場誘致に最大1兆2080億円の補助金を投入することを表明しています。さらに、自動運転やAIなど、今後も新しい技術が生まれることが予想されますし、日本での半導体の需要は続くでしょう。

半導体エンジニアの不足は続く

日本において、半導体エンジニアは現在不足しており、将来も不足することが予想されています。

リクルートによる発表を見ると、半導体エンジニアの求人数は2021年には2013年時点の7.4倍、2022年にはさらに13.1倍となっています。「半導体人材の求人数は今後、伸びが比較的緩やかになるものの、増えていく。一方で応募数は伸びにくくなるだろう。このような状況で、人材の取り合いが既に起こっている」ということです。

このように、半導体エンジニアは半導体自体の需要の高まりと、人材不足によって将来的にも需要が高まり、求職者が有利になるでしょう。

半導体エンジニアの年収は高まる可能性がある

将来的にも、半導体エンジニアの年収は高まる可能性があります。

リクルートによると、提示した年収が「600万円以上」の企業の割合が、18年度は13.1%だったのに対し、23年度は19.5%であったとのことです。半導体人材の需要の高まりもあり、半導体エンジニアの年収が上昇していることがわかります。

また、毎日新聞によると、半導体業界への転職者の年収が「10年前から2.2倍に上昇した企業もあった。経験者であれば1000万円超えも珍しくない」ということです。

このように、半導体エンジニアの人材不足から、将来的にも同様に年収が上がると期待できるでしょう。

半導体エンジニアで高い年収を得るために必要なスキル

半導体エンジニアの年収は将来的にも上がることが考えられますが、確実に高年収を得るためにはスキルが必要です。これらの能力を身につけることで、より年収を高められる可能性があるので確認しておきましょう。

電気・電子などの知識

半導体エンジニアがより良い年収を得るためには、電気・電子などの知識を持っていたほうがよいでしょう。

半導体を組み込んだ製品においては、電気回路を集積した回路の設計を担います。これにはアナログ回路やデジタル回路、混合信号回路、トランジスタやコンデンサなどの電子素子の知識が必要です。

また、大規模集積回路の設計などにおいても、性能やエネルギー効率、信頼性などのバランスをとりながら複雑な素子の設計をする必要があります。電気や電子の知識は重要ですので、身につけておきましょう。

最新技術のキャッチアップ

半導体エンジニアとして評価されるには、最新の材料や技術に関する情報に関心を持ちつづけるということが必要です。

半導体業界では、めまぐるしく研究や開発が行われており、情報や技術が早いスピードでアップデートされています。「業種別の人材動向及び技術動向」の資料では、「従来の半導体産業の成長を支えてきた微細加工技術においては、ナノメートルの単位での加工技術が求められており、既存の材料やプロセス技術だけの対応では信号遅延や混信などの問題が顕著となりつつある。今後、新材料や新プロセス技術等の開発が必要となる」とされています。また、ソリューション提案まで含めた製品が業界の主流となるとも予想されています。

このように新しい技術が次々に生まれる状態なので、常に最新情報をキャッチアップしていかなくてはなりません。論文や業界ニュースなどをチェックしたり、社内外のセミナーや勉強会に参加したりすることなども大事になります。

コミュニケーション力

コミュニケーション力がなければ、半導体エンジニアとして高い年収を得るのは難しいかもしれません。

半導体エンジニアの仕事は基本的にチームで行います。意見やアイデアを出し合ったり、進捗の共有を行ったり、チームで協力をしながら半導体の設計を行っていきます。コミュニケーションをスムーズに取れなくては、プロジェクトに悪い影響を与えてしまうかもしれません。

さらに、営業や販売、製造部門などとの連携が必要ですし、クライアントや社外の関係会社とのコミュニケーションも必要になるのでコミュニケーション能力は大事です。

英語力

半導体エンジニアの年収を高めるのには、英語力もあったほうがよいです。

半導体業界は世界中で日夜研究・開発が行われており、最新情報や論文の多くは英語で発信されます。半導体エンジニアとして成長をし、成果を出していくためには、こういった最新の情報をキャッチする必要があります。

また、半導体は海外売上比率が高いので、海外のクライアントや取引会社、パートナーなどとコミュニケーションを取らなくてはならない場面も多いでしょう。このような理由から、英語力があることで企業と年収の交渉も行いやすくなるでしょう。

半導体エンジニアで年収を上げる方法

半導体エンジニアが現在よりも年収を上げるにはどうすればよいでしょうか。ここではキャリアを重ねながら年収を上げる方法を紹介します。

資格を取得する

資格を取得することは、半導体エンジニアの年収を上げるのに有効です。半導体企業のなかには、エンジニアが資格を取得することに対して支援を行っている企業も多いですし、資格取得者に対して報酬を与える企業や昇給を行う企業があります。

半導体エンジニアの取得によい資格としては、半導体技術者検定や半導体製品製造技能士、機械保全技能士、品質管理検定、CAD利用技術者試験などがあります。ほかにも機電系の資格には業務に活かせるものがあるので調べてみましょう。

資格を取得することで年収が上がるだけでなく、より業務への理解が深まるでしょう。

リスキリングをする

リスキリングも半導体エンジニアが年収を上げる方法です。リスキリングを行うことでスキルを高めれば、より活躍の場が広がり年収が上がる可能性があります。

「エンジニアのリスキリング」に関するアンケート調査によると、製造業系エンジニアのなかで、個人でリスキリングの取り組みを行っているエンジニアは7.7%、これから行う予定の人は18.8%となっています。

リスキリングを行っていないと他のエンジニアの人から取り残される可能性がありますし、他のエンジニアと差をつけられないでしょう。差別化するためにもリスキリングを行いましょう。

転職する

転職をすることでも半導体エンジニアは年収を上げられる可能性があります。ここまで述べたように、半導体業界は人材不足が続いていますし、人材獲得競争は激しくなっています。

自身が就職した時と比べて、現在では転職市場が大きく変わっている可能性があるのです。経験を積んでいれば、より高い年収で転職ができる可能性があります。外資系企業や大手などの一次請けの企業へ転職ができれば、より大きく年収が上がるでしょう。

また、転職をするときには転職エージェントを活用することで、より年収が上がる可能性があります。転職エージェント利用者は、非利用者と比べて転職時の年収アップ成功率が高いというデータがあります。

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半導体エンジニアは将来的にも需要が高い仕事であり、先々も安定した年収が期待できます。理系出身や半導体業界の経験がある人、今回紹介した知識やスキルがある人は、ぜひ半導体エンジニアを目指してみてください。

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