半導体の需要が高まり半導体エンジニアが不足しているという情報を見る機会が増えています。半導体企業ではエンジニアの確保が急務となっており、未経験からエンジニアを育成するという企業も増えてきています。
はたして、半導体エンジニアの転職事情はどうなっているのでしょうか。未経験からでも転職することができるのでしょうか。この記事では、半導体エンジニアの仕事内容や年収、メリットを解説するとともに、半導体エンジニアに転職するために必要なスキルなどを解説します。
目次
半導体エンジニアとは
半導体エンジニアとはどのような仕事なのでしょうか。半導体エンジニアの仕事の内容は、半導体の設計・開発、半導体製造プロセスの最適化、半導体を使用したデバイスの設計や製造などです。
半導体にどのような処理を行わせるのかを計画し、その仕様を満たすために半導体チップにどんな素子を組み込むかという設計を行います。そして、半導体の製造ラインにおいて、最適な設備や工程を設計します。また、MPUやGPU、CMOSなどのように半導体が使用された半導体素子(デバイス)の設計や試作、評価、改善を行います。
これらの仕事は、「半導体設計エンジニア」「半導体プロセスエンジニア」などのようにそれぞれ専門の職種として分けられることが多いです。半導体エンジニアの仕事内容や将来性、求められるスキルなどについては以下の記事で詳しく解説しているので参考にしてください。
半導体エンジニアの年収
半導体エンジニアに転職したらどれくらいの年収が期待できるのでしょうか。半導体エンジニアの年収について解説していきます。
厚生労働省の職業情報提供サイトによると、半導体エンジニアの平均年収は688.2万円となっています。国税庁の「令和5年分 民間給与実態統計調査」では、日本の給与所得者の平均給与は460万円とされているので、半導体エンジニアの給与はかなり高いことがわかります。
年齢別の年収を見ると55~54歳でもっとも年収が高くなり、平均841.26万円となるようです。70歳以上でも438.89万円であり、長期に渡って高収入が得られる仕事といえるでしょう。
また、「所定内給与額別の人数割合」を見ると、月給で40~44.9万円の人が13%でもっとも多く、60~69.9万円の人も6.7%います。このように、給与水準が高い仕事といえるでしょう。
半導体エンジニアの転職事情
半導体エンジニアへの転職市場はどうなっているのでしょうか。転職は難しいのでしょうか。
半導体への需要は拡大
まず、半導体自体の需要をみてみると、その需要は高まっています。
総務省のデータによると、「世界の半導体市場(出荷額)は、2015年以降増加傾向にあり、2022年には12兆5,493億円(前年比32.1%増)となった」とされており、半導体市場が拡大していることがわかります。また、日本の「日本の半導体市場(出荷額)の推移」も、2022年に大きく増加しています。
台湾のTSMCを誘致し工場を熊本県に建設するなど、政府も2023年度の補正予算では半導体の国内での生産能力強化のため約1兆5000億円が計上され、半導体製造に注力していく身通しです。また、IoTやAIなどがより普及することを考えると半導体の需要はさらに高まるでしょう。
半導体エンジニアの需要は大きい
半導体の需要の高まりとともに、半導体エンジニアの需要も大きくなっています。
「2022年度の半導体エンジニアの求人は17年度に比べ3.8倍に急増」とという情報や、「半導体関連エンジニア求人の推移を見ると、2013年1-6月期を1とした場合に、2023年1-6月期は12.8倍」というデータがあります。
これは、半導体の需要が大きくなっているのにも関わらず、半導体人材が減っているからと考えられます。半導体人材に関しては、「1998年に約23万人だった半導体人材注は、2019年には約17万人にまで減少」しているとされています。
半導体の需要増加に対して、半導体エンジニアが大きく不足しているので、半導体エンジニアに転職しやすいのです。
転職がしやすい地域・職種
では、半導体エンジニアとして転職をするときに、転職がしやすい地域や職種はあるのでしょうか。
日経クロステックの記事によると、工場建設が進んでいることで北海道・東北、九州・沖縄の求人数が大きく伸びているようです。ほかにも、今後工場が建設される地域や半導体メーカーがある地域では転職がしやすくなるでしょう。
また、半導体エンジニアにはさまざまな職種がありますが、職種でみると「材料開発」「品質管理・品質保証」「製造装置・部品開発」の求人が伸びており、特に「品質管理・品質保証」は大きく伸びているとのことです。こういった地域や職種では転職しやすいといえるでしょう。
半導体エンジニアへの転職のメリット
半導体エンジニアへ転職をするメリットとはどのようなものでしょうか。
モノづくりに携われる
半導体エンジニアの仕事に就くことで、モノづくりに携わることができます。
半導体エンジニアの仕事は、半導体自体を作ったり、半導体を利用した製品の製造に関わったりできます。自分のスキルを活かしてより良い製品を設計したり、イチからモノを生み出したりといった経験ができます。自身が関わった製品が世の中で広く利用されるという体験もすることができるでしょう。
モノを作る仕事に憧れている人、ふだんからモノづくりを行っている人などは、半導体エンジニアに就くことで自分の興味や特性を活かして仕事をすることができるはずです。
手に職をつけられる
半導体エンジニアに転職することで、手に職をつけることができます。
半導体エンジニアの仕事では、イレブンナイン(物質の純度が99.999999999%)と言われる高水準のものづくりを経験でき、高度な技術を身につけることができます。電子・電気工学や数学、EMCなどの知識、システム設計やレイアウト設計のスキル、CADの操作スキルなどが求められ、業務を続けることでこういった知識やスキルを身につけることができます。エンジニアとして手に職をつけることができ、その後のキャリアをより広げることができるでしょう。
電器製品やIoT、AIなどの需要は増加していますし、半導体エンジニアの需要は今後もなくなることはありません。だからこそ、半導体エンジニアとしての知識やスキルを身につけておくことで、将来にも仕事を安定させることができるでしょう。
正社員として働ける
半導体エンジニアとして転職することで、正社員として働ける可能性が高いです。職業情報提供サイトの半導体エンジニアの「一般的な就業形態」を見ると、「実際に働いている人が多いと感じる『就業形態』」としては、正社員が92%となっています。就業している多くの人が正社員として働いていることがわかります。
半導体メーカーは人材不足から雇用の待遇や条件を整えています。正社員として雇用することで、人材を囲い込んでいるのです。現在、派遣や契約社員として働いている人なども、半導体エンジニアに転職することで正社員として安定した職を得られるでしょう。
環境が整っている
半導体エンジニアに転職することで、労働環境や教育体制が整備されている環境で働くことができます。
半導体メーカーでは、人手不足から未経験者を採用している企業が多くあります。そういった企業では、研修や教育カリキュラムなどの教育体制を整備しており、経験者や理系出身でなくても半導体エンジニアとして育成をしてもらえます。
また、人手不足から半導体企業は労働環境を整えており、より働きやすい環境を作っていますし、福利厚生や休日なども充実しているでしょう。
半導体エンジニアへの転職に有利なスキル
半導体エンジニアに転職するときに、持っていると選考に有利になるスキルはあるのでしょうか。
工学的な知識
工学的な知識は半導体エンジニアの転職で有効です。半導体の製造には電気工学や電子工学、材料工学、情報工学などの知識が必要になります。アナログ電気回路やIoT、AIなどについても知っておくと有利かもしれません。
大学や専門学校などでこういった工学を専攻していた人などは基礎があるので、転職前に別の仕事をしていたとしても転職で採用してもらえる可能性が高まります。
英語力
半導体エンジニアでは、英語力があると採用に有利になる可能性があります。
半導体に関する研究や開発は世界各国で行われており、その最新情報や論文などは英語で発表されることが多いです。そういった情報を素早くキャッチアップするためには、英語の能力が必要になります。さらに、半導体工学は英語で作られているので、英語力があると理解がスムーズに進みます。
また、半導体は海外の企業と取引をすることが多いですし、海外の企業とパートナーとして協業することも多いです。こういった場面では、英語でやりとりする機会も多いので英語力がある人材が求められる傾向にあります。
コミュニケーション力
コミュニケーション力があれば半導体エンジニアへの転職が有利になるかもしれません。
半導体エンジニアの仕事は基本的にチームで行いますので、メンバーとの意見交換や報告、プロジェクトマネジメント、問題が起きた時の解決策の検討などが必要になります。また、クライアントから要望のヒアリング、納品までの進行を行う必要がありますし、パートナー企業との調整、海外との技術交流なども行わなくてはなりません。
こういった場面では、相手の意図を汲み取り、スムーズにコミュニケーションを取る力が重要になります。これまでの職歴のなかでコミュニケーション力を養ってきた人は転職が有利になるでしょう。
プログラミングスキル
プログラミングスキルがあると、半導体エンジニアの設計開発職への転職で有利になる可能性があります。
半導体の設計やテスト、シミュレーションでは、プログラミングスキルが必要になります。こういった業務においては、C言語やC++、C#などの言語が利用されます。ほかの言語であっても、プログラミングの経験があれば有利になるでしょう。
また、設計図を作成するCADなどのツールやシミュレーションソフトウェアなどの経験などもあると有利になる可能性があります。
未経験でも半導体エンジニアに転職できる?
ここまで、半導体エンジニアの転職事情やスキルについて解説してきましたが、半導体業界未経験でも転職はできるのでしょうか。
未経験でも転職可能
結論から述べると、半導体エンジニアは未経験でも転職が可能です。
2022年度の転職者では「異業種×異職種」が33.6%と、ほかの転職パターンよりも大きな割合となっています。
未経験でも化学メーカーなどで材料開発を行っていた人、学生時代に半導体を用いた研究に携わった人、理系分野の基礎がある人などはより転職がしやすいといえます。ほかにも、プログラミングスキルがある人、生産設備の運用経験がある人なども採用されやすいので、未経験でもこういったバックボーンがある人は応募してみましょう。
ただ、こういった経験がなくても、未経験者をイチから育成するための研修を行っている企業も増えています。企業の教育体制や募集要項などを確認してみましょう。
派遣エンジニアという働き方もある
理系の基礎知識や半導体エンジニアとしての経験がない場合などは、派遣エンジニアとして働くという方法もあります。
半導体業界では2017年度と比較して、「派遣求人が1.68倍に、半導体業界で働く派遣エンジニアの就業者が2.42倍」になったという調査結果があります。未経験でも、派遣エンジニアであれば採用される可能性があるのです。
派遣エンジニアとして働き経験を積むことで、正社員になることもできるでしょう。
半導体エンジニアの転職はベスキャリで
半導体エンジニアへの需要は大きくなっており、転職しやすい仕事といえます。未経験可の求人も増えていますし、研修を行っている企業も多いです。半導体製造、ものづくりの仕事に興味のある人はぜひ応募してみてください。
ベスキャリが運営するベスキャリ機電では、半導体エンジニアの求人を多く掲載しています。15年以上の運営歴があり、そのネットワークから非公開求人など幅広い職種の求人があります。
専任のアドバイザーがつき、求人の提案、キャリアパスの相談、面接や書類のアドバイスなども行います。エンジニアに特化しているからこそ、より専門的なニーズにも応えることができます。ぜひご登録ください。