セキュリティエンジニアを目指そうと考えている人や現在セキュリティエンジニアとして働いている人のなかには、どのようなキャリアパスを歩むべきかを知りたいと思っている人は多いと思います。はたして、セキュリティエンジニアは働くなかでステップアップしていき、十分なキャリアを築けるだけのキャリアパスがあるのでしょうか。
この記事では、セキュリティエンジニアが選ぶことができるキャリアパスについて解説します。キャリアを高めるのにおすすめの資格やキャリアの始め方についても紹介するので、ぜひ参考にしてください。
目次
セキュリティエンジニアの仕事とは
セキュリティエンジニアは、サーバーやネットワーク、ITシステムのセキュリティに関する設計、構築、運用・保守を担う、情報セキュリティに特化したエンジニアです。ITシステムやソフトウェアは業務の効率化など、多くのメリットを企業にもたらしますが、その一方で、セキュリティの脆弱性による個人情報の漏洩や、ランサムウェアによる攻撃のリスクも伴います。こうしたトラブルを未然に防ぐために、セキュリティエンジニアの需要は高まっています。
しかし、セキュリティエンジニアの需要が高まる一方で人材は不足しています。アメリカの非営利組織「ISC2」が実施したサイバーセキュリティ人材調査によると、日本国内のサイバーセキュリティ人材は約48万人とされています。一見、多いようにも思えますが、実際には人材の需給ギャップが過去最大に拡大しており、適切にデジタル資産を保護するためには、さらに約11万人の人材が必要とされています。
セキュリティエンジニアのキャリアパス
セキュリティエンジニアの需要は年々高まっており、必要とされる業界も多岐にわたるため、幅広いキャリアパスを描きやすいのが特徴です。ここではセキュリティエンジニアがどのようなキャリアを築けるのかを解説します。
セキュリティオペレーター
セキュリティオペレーターは、セキュリティエンジニアのキャリアパスを描く上で初めに経験することが多い職種です。
セキュリティオペレーターとは、情報システムやネットワークを監視し、不正アクセスやサイバー攻撃からWebサイトやサーバー、IoT機器などを守る仕事です。より強固な情報システムの企画・設計を行い、セキュリティ上の問題がないかの監査を行います。また、情報システムの脆弱性診断や、攻撃を受けた際の痕跡調査、トラブル発生時の対応なども行います。
セキュリティオペレーターは、主に保守・運用が中心の業務となりますが、この分野でしっかりと経験を積むことで、将来的にキャリアパスを描きやすくなります。なお、セキュリティオペレーターとしてキャリアを重ねることで、リーダーを目指すこともできます。
管理職
セキュリティオペレーターとして経験を積み、チームリーダーなどを経験したあとには管理職のキャリアを歩むことができます。
チームリーダーを任され、プロジェクトの進捗管理や品質管理などをできるようになると、将来的にはマネージャーへの道も開けます。マネージャーになると、セキュリティに関する戦略の立案からセキュリティポリシーと手順の策定、リスク評価・管理、メンバーの教育、などに携わることになります。場合によっては組織全体の見直しを図る、重要な役割を担うこともあるでしょう。
管理職はセキュリティに関する豊富な知識と経験だけでなく、チームメンバーを育成するためのマネジメント能力が求められます。
セキュリティアナリスト
セキュリティアナリストは、一定の知識と経験を有したセキュリティエンジニアが就くことができる職種です。
セキュリティアナリストは、最新のサイバー攻撃や対策方法の情報を収集するとともに、マルウェアの解析やログ分析を行い、有効なセキュリティ手法を考え、実施する仕事です。企業のセキュリティリスクの分析、セキュリティポリシーの策定、セキュリティ対策の実施などを行います。
システムを分析してセキュリティリスクを発見、対策を実施するだけの知識と経験が必要になるので、まずはセキュリティエンジニアとして経験を積むことが求められます。
セキュリティエンジニア
「セキュリティエンジニア」は広義ではセキュリティに関わるエンジニア全般を指しますが、狭義では「セキュリティエンジニア」という職種のことを指します。セキュリティエンジニアはシステムやネットワークの設計や実装など、よりエンジニアリングに特化したポジションです。
セキュリティエンジニアは、セキュリティホールがないようシステムやネットワークを設計したり、ファイアウォールを導入したり、脆弱性がないようにプログラミングやテストをしたりといったことを行います。
だからこそ、ネットワークやサーバー、OSのセキュリティについての知識、プログラミングスキル、最新のサイバー攻撃の情報などを備えていなくてはなりません。セキュリティだけでなく設計や開発、実装のスキルも求められるので、セキュリティエンジニアは一定の経験を積んだあとに就くことになる職種といえます。
CISOやCSO
セキュリティエンジニアとして十分な経験を積み、専門性を高めていくことで、将来的には企業を牽引する立場になることも可能です。それにはCISO(最高情報セキュリティ責任者)やCSO(最高セキュリティ責任者)といったポジションがあります。
CISOは企業全体の情報セキュリティを統括する役割を担う職種であり、セキュリティリスクの管理や戦略の策定・実行を主導します。情報セキュリティ基盤の構築から人材の確保、関係部署との調整に至るまで、情報セキュリティ対策の総責任者として活躍します。
一方、CSOは情報に関するセキュリティだけでなく、物理的なセキュリティや企業全体のセキュリティまでを管理する仕事です。危機管理や施設のセキュリティなど、従業員や顧客の安全まで責任を負います。
CISOとCIOはいずれも、より上流の立場から予算の確保やリソースの配分、リスク管理体制の構築などを行います。セキュリティ部門の責任者として、リスクマネジメントに関してすべての責任を負います。
セキュリティコンサルタント
セキュリティに関わるエンジニアとして十分な経験を積んだ後には、セキュリティコンサルタントになることも可能です。セキュリティコンサルタントは、顧客のあらゆるリスクに対して、他の関係者と連携しながら助言を行う仕事です。クライアントのセキュリティ体制を分析し、セキュリティに関する戦略の提案やマネジメント支援を行います。
情報セキュリティやネットワーク、アプリケーションに関する高度な知識と経験に加え、仮説を構築するスキル、クライアントとコミュニケーションを取る力、プレゼンテーション力が求められます。
セキュリティコンサルタントは、企業に所属するだけでなく独立をしてフリーランスになることも可能です。
事業会社のセキュリティ担当者
セキュリティエンジニアのキャリアパスには、ベンダーとしてクライアントのセキュリティの支援をするだけでなく、事業会社内のセキュリティ担当者になるというキャリアパスもあります。その場合は、ベンダーで経験を積んだあとに事業会社に転職をするというキャリアパスが多いでしょう。
情報セキュリティ担当者の主な仕事は、社内のネットワークやサーバーのセキュリティ対策と監視、情報セキュリティポリシーなどの社内規定の維持や改定、安全管理策に対する各部門との調整、情報セキュリティに関する認証の取得や維持・管理、セキュリティに関するトラブル対応などです。
事業部門ごとに個別の安全管理策を実施する場合には、各部門からの協力を得ることや必要に応じて情報セキュリティに関する教育・研修などを行うこともあります。
セキュリティエンジニアがキャリアを高めるのにおすすめの資格
セキュリティエンジニアにはさまざまなキャリアパスがありますが、キャリアを高めるためには資格を取得することも有効です。独立行政法人の情報処理推進機構で「サイバーセキュリティエンジニアに有用な情報処理技術者試験」と紹介されている国家資格と、代表的な民間資格を紹介します。
情報処理安全確保支援士試験
情報処理安全確保支援士試験は、情報セキュリティに関する知識や技能を持つことが認められる国家資格です。通称「登録セキスペ」とも呼ばれ、セキュリティ分野の専門家としてのスキルを証明できます。
情報処理安全確保支援士試験はサイバーセキュリティ対策を推進する人材の育成・確保を目的としています。資格を取得することで、情報セキュリティ要件の抽出や、情報セキュリティマネジメントについて指導・助言を行う能力、ネットワークやデータベースに関する知識、現状の調査や分析、評価を行う能力を証明することができます。
ネットワークスペシャリスト試験
ネットワークスペシャリスト試験は、ネットワーク分野における専門的な知識や技能を認定する資格です。ネットワークシステムの企画立案から要件定義、設計、構築、運用・保守まで幅広く対応できるスキルや、他の技術者への指導を行う能力が求められます。
この試験は、情報処理安全確保支援士試験と同様に、情報処理技術者向け試験の中でも最も難易度の高いレベル4に位置付けられています。そのため、合格には高度な知識と実践的なスキルが必要です。合格率は2024年度春期で15.4%、例年12~17%前後を推移しており、合格を目指すには十分な学習と対策が欠かせません。
応用情報技術者試験
応用情報技術者試験は、IPAが実施する国家試験「情報処理技術者試験」のひとつで、ITサービスやシステム、ソフトウェア開発に関する基礎知識に加え、管理や経営に関する応用的な知識・技能を認定する試験です。
この試験では、データベースやセキュリティといった技術的な知識に加え、プロジェクトマネジメント、システム監査、経営戦略、法務など幅広い分野の知識が求められます。
合格率は例年22%前後で推移しており、難易度はレベル3に相当します。試験範囲が広いため、合格を目指すには計画的な学習と十分な準備が必要です。
CompTIA Security+
CompTIA Security+は、欧米を拠点にIT規格の標準化を推進する団体「CompTIA」が認定するサイバーセキュリティ関連の資格です。セキュリティマネジメントやセキュリティ関連のスキル、最新のトレンドを網羅しており、ベンダーニュートラルな認定資格として国際的な信頼性も高いのが特徴です。
この資格を取得するためには、以下の要件を満たしていることが推奨されます。
- セキュリティを中心としたネットワーク管理の業務経験が最低2年間ある
- 情報セキュリティの技術的側面を日常的に扱う業務経験がある
- 出題範囲の項目を含め、セキュリティ上の問題や実装に関する幅広い知識を持っている
試験の出題範囲は広範囲に及びますが、他の高度な資格と比べると難易度は低めです。
CCNA
CCNA(Cisco Certified Network Associate)は、シスコシステムズ合同会社が認定するネットワーク関連の資格です。ネットワークからセキュリティの基礎、自動化やプログラマビリティ、IPサービスなども学習対象に含まれており、ネットワークの最適化や管理に必要なスキルを持っていることを証明できます。
ただし、2020年に試験内容が改定され、より実践的なスキルが求められるようになったため、ネットワークの導入や構成、セキュリティ、自動化に関する知識・スキルを身に付ける必要があります。なお、CISCOが提供する「Implementing and Administering Cisco Solutions (CCNA) v1.0」コースは、CCNAの受験対策に役立ちます。
セキュリティエンジニアにおすすめの資格は以下で詳しく解説しています。
『セキュリティエンジニアにおすすめの資格とは?国家資格、民間資格ともに紹介』
セキュリティエンジニアとしてキャリアを始める方法
セキュリティエンジニアのキャリアパス、キャリアを高める方法について解説してきましたが、これからセキュリティエンジニアとしてのキャリアを始めるという人はどうすればいいでしょうか。キャリアをスタートする方法について解説します。
大学で学ぶ
セキュリティエンジニアを目指すには、大学に通うのもよいです。大学の工学部や理工学部などに入ることで、情報通信やプログラミングなど、セキュリティの仕事で必要な基礎知識を学ぶことができます。
セキュリティエンジニアとして働くためには情報セキュリティや通信、サーバーなどの知識が必要ですが、大学の情報科学部や情報工学部などではこういった知識を基礎から学ぶことができます。ネットワークやサーバー、物理的な災害リスクなども学ぶことができますし、プログラミングの根本となる理論を学ぶこともできるので、ITやセキュリティに関する基礎をしっかりと身に付けたい場合におすすめです。
ただし、大学に通うためには当然入試に合格する必要があり、入試に向けた勉強も必要です。また、大学に入学できたとしても4年間通学しなくてはなりませんし、学費もかかってくるのがネックになるでしょう。
他のエンジニア職で経験を積む
他のエンジニア職で経験を積むということも、セキュリティエンジニアのキャリアをスタートをするのにはよいでしょう。セキュリティエンジニアには、サーバーやネットワークの設計・構築スキル、サイバー攻撃についての知識、アプリケーションのセキュリティ、ファイアーウォールなど、広い範囲かつ高度な知識とスキルが求められます。
これらは一朝一夕に身に付くものではないため、インフラエンジニアやサーバーエンジニア、バックエンドエンジニアとしてのキャリアを積み、セキュリティに関する知識をつけてからセキュリティエンジニアを目指すのがよいかもしれません。
また、情報の流出などが起きるとクライアントに大きな損害を与えてしまうことになるので、セキュリティエンジニアは責任の大きい仕事です。高い知識とスキルを身につけるためにも、イチからキャリアを始めるような場合には、他のエンジニア職で経験を積んでセキュリティに関係する要素の知識と経験を積むのもよいでしょう。
派遣社員・業務委託として働く
セキュリティエンジニアのキャリアを始めるのに、まずは派遣社員や業務委託として経験を積んでいくのもおすすめです。派遣社員や業務委託の求人は、セキュリティに関する業務を行っている企業から依頼された業務を行います。正社員の場合にはプロジェクトの根幹を担うため、就職のハードルは高いでしょう。派遣社員や業務委託であれば周辺業務やサポートを行うことも多いため、正社員よりも採用されやすいといえます。
派遣社員や業務委託として経験を積むことで、セキュリティに関するあらゆる業務を経験でき、知識やスキルを深めることができます。経験を積んでから正社員を目指すというのも、セキュリティエンジニアとしてのキャリアを築くのにはよいでしょう。
セキュリティエンジニアの派遣・業務委託案件はベスキャリITで
セキュリティエンジニアのキャリアパスには様々な選択肢があります。これからキャリアを築いていく人は、将来のビジョンをもってキャリアを選択しましょう。セキュリティエンジニアとして経験を積むには、フリーランスや派遣などで様々な経験をするのもおすすめです。
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