ITエンジニアの転職において、転職理由は重要な要素です。書類審査や面接での転職理由は、採用側の印象を大きく左右するので、しっかりと考えたほうがよいでしょう。

ここでは、どのような転職理由を説明したらいいかわからないという人のために、多くのエンジニアの転職を支えてきたベスキャリの知見から、ITエンジニアが転職するときにはどのような転職理由にすべきかや転職理由の例、面接での対策方法などを紹介します。

エンジニアはどんな理由で転職している?

ITエンジニアは、実際にはどのような理由で転職をしているかをまとめておきます。

転職するエンジニアはどれくらいいる?

まず、転職するITエンジニアはどれくらいいるのでしょうか。

エンジニア300名を対象にしたITエンジニアの転職意識調査によると、4人に1人のエンジニアが転職活動中または転職を検討中という結果となっています。また、女性エンジニア300名を対象にした調査では、38.4%が転職活動中または転職を検討中となっており、女性のほうが転職に意欲的ということがわかります。

ITエンジニアでは多くの人が転職を検討していることがわかりますし、今後転職をする人も多いと考えられます。

エンジニアが転職する理由とは

では、ITエンジニアが転職をしている理由とは何なのでしょうか。

上の意識調査の「エンジニアが転職を決めた理由」を見ると、1位は「収入アップのため(42.4%)」、2位が「会社や業界の将来性に不安を感じて(22.4%)」、3位が「キャリアアップのため(16.5%)」となっています。

転職理由としては、収入を上げるためというのが最も大きな理由となっています。また、変化が激しい業界であることや、将来性が期待できない企業があることなども理由となっているようです。また、エンジニアは転職によって新しい知識や経験を得られるので、キャリアアップのために転職をする人も多いようです。

転職先の企業に求めることとは

ITエンジニアが転職先の企業に求めるものとは何なのでしょうか。上の調査の「転職先に求めること」では、「給与や待遇の向上(64.7%)」「やりたい仕事ができる環境(35.9%)」「長く安心して働ける環境(24.1%)」という順になりました。

やはり転職理由である「収入」「安定性」「成長」という点が理由となっていることがわかります。転職をする際には、これを軸に転職先企業を探すのがよいでしょう。

転職のその他の理由

ここまで説明した理由以外に、ITエンジニアは様々な理由で転職をすることが考えられます。調査データにはないですが、考えられる理由を紹介します。

まず考えられる転職理由が「人間関係」です。ITエンジニアは、基本的にチームで仕事を行います。だからこそ、チームの人とうまく関係が作れなかったり、自己主張の強いメンバーに振り回されたり、気軽に相談ができなかったりすると、うまく仕事を行うことができませんしストレスになってしまいます。

また、「社風が合わない」ということも転職の理由となります。ワンマン社長が怒鳴り散らすような会社やオフィスの空気が重い会社、体育会系の社風の会社など、様々な会社があります。それが自身に合わないと感じると転職をすることになります。

「業務内容がマッチしていない」ということも、転職理由となることが多いと思われます。面接の時に聞いていた内容と実際の業務内容が異なる、上流の工程で働きたい、興味のある分野が変わったということも転職理由となります。

エンジニアの転職理由が重要なワケ

エンジニアの転職において、転職理由は重要と述べましたが、なぜそれほど重要なのでしょうか。その理由を説明します。

まず、求職者が転職をしているということは、現職において何らかのミスマッチや問題があったからということになります。これらの理由を明確にしておかなくては、自社においてもまたミスマッチとなり退職をしてしまうかもしれないですし、同じトラブルが起こるかもしれません。そういった事態を防ぐために転職理由を確認するのです。

また、採用担当者は転職理由と志望動機の一貫性を確認することで、自社の理念やカルチャーに合致しているかも判断します。このような理由で、ITエンジニアの転職理由は重要なのです。

エンジニアの転職理由はどう説明すべき?

上の調査では、「退職理由をどのように伝えるべきかわからない」という人が5.3%いました。ここでは、ITエンジニアが転職理由をどう伝えるべきかを解説します。

ネガティブな理由をそのまま伝えるのは避ける

ITエンジニアが転職理由を説明するときには、ネガティブな理由をそのまま説明するのは避けたほうがよいでしょう。

たしかに、企業側としては入社後に退職されることを防ぎたいので、ネガティブな理由でも把握をしておきたいものです。ただ、ネガティブな理由だけを聞くと、採用担当者は問題を避けるための転職であり入社後に活躍してもらえるかがわからないと考える可能性があります。

例えば、「現職の仕事内容がしたいことでなかった」という説明では、入社後にも同じことが起こるのではないか、忍耐ができない人なのではないかと思われる可能性があります。こういった場合には、「自身の希望の仕事内容ではなかったが、より成果を出すために工夫を行ってきた。しかし、これ以上成長が望めなくなったので転職をした」のように前向きな姿勢を絡めながら伝えましょう。

ただし、過剰な残業や休日出勤などブラック企業であった場合のように、転職理由が妥当なものに関しては正直に伝えて問題ないです。

このように、ネガティブな理由が事実だったとしても、企業側にはそのまま伝えるのではなく、ポジティブな面をアピールするようにしましょう。

貢献につなげる

ITエンジニアが転職理由を説明するときには、転職理由がいかなるものだったとしても、企業への貢献につながるものにしましょう。

例えば、キャリアアップのための転職の場合には応募先企業において上流工程やマネジメント部門において貢献できると伝えたり、異なる分野の仕事がしたいという場合にはこれまでの経験を活かしてより幅広い業務に対応できると説明したりといった具合です。

素直に給与が低かったからなどと説明するのでなく、企業に対してどのような貢献ができるかを伝えるようにしましょう。相手の立場に立って、企業側が採用をすることでどのようなメリットが得られるかをアピールするのがよいです。

企業の理念・ビジョンに合わせる

ITエンジニアが転職理由を伝えるときには、応募企業の理念やビジョンに合わせるようにしましょう。採用担当者は企業の理念やビジョンに共感しているかを重視します。これらに共感していないと、企業の目標を一緒に目指すことが難しくなるからです。

企業の理念やビジョンに近い目標を達成するために転職をしたという理由を説明するとともに、企業の理念やビジョンに共感を感じているからこそ働きたいというように伝えるのがよいでしょう。

このように、企業の向かう方向とキャリアを通して自身が目指す方向が同じであることを示すのです。

抽象的な理由は避ける

ITエンジニアの転職理由としては、抽象的な理由は避けるようにしましょう。「キャリアアップしたい」「やりがいのある仕事をしたい」などのような漠然とした回答では、採用担当者に意欲や想いが伝わりません。

どのようにキャリアアップをしたいのか、どのような業務をやりがいがある仕事だと思っているのかを説明しなくてはなりません。また、それは企業のなかのどのような仕事なのか、それによって企業にどのようなメリットを与えられるのかを説明するのがよいでしょう。

具体的に転職理由を説明することで、より説得力のある説明ができますし、採用担当者も入社後の姿をイメージできるはずです。

現職で努力したことを伝える

転職理由を伝えるときには、現職で努力をしたことを伝えましょう。

採用担当者は、転職者に対して、合わないことがあった場合や自身の希望と異なる事態が起こったときに、すぐに退職をしてしまうのではないかと不安を感じています。ですので、現職において転職理由となっていることを変えるために、最大限の努力をしたということを伝える必要があるのです。

体制や仕事内容など、自身が転職をするきっかけとなったことを変えようとしたこと、それでも改善できなかったので転職を決意したというように、転職までの経緯を具体的に語るのがよいのです。

キャリアのストーリーを語る

ITエンジニアが転職理由を伝えるときには、自身のこれまでのキャリアをストーリーとして語るのがよいでしょう。

これは、どのような想いや目標があってエンジニアになり、その目標を実現する過程でどのような仕事に就き、どんなスキルや知識を得てきたのか、今回の転職がその目標を達成するためにどのような位置付けなのか、をストーリーのなかで語るということです。それによって、採用担当者に対して納得感を与えることができるでしょう。

過去から未来への一貫したテーマを作り、それをストーリーとして語ることが重要なのです。

自身の強みにつなげる

ITエンジニアの転職においては、自身の強みと応募企業での業務をつなげるようにしましょう。

採用面接においては、自身の強みを伝えることが重要です。強みを明確にすることで、他の応募者との差別化ができますし、入社後にどのような活躍が期待できるかがイメージできます。だからこそ、転職理由と自身の強みをつなげるのがよいのです。

これまでのキャリアでどのような強みを養ってきたのかを説明するとともに、現職ではその強みを活かせておらず、入社後には強みを活かしてどのような活躍ができるのかということを伝えるのもよいでしょう。

エンジニアの転職理由の例

では、ITエンジニアが実際に転職理由を伝えるための例を紹介します。転職理由の内容ごとに紹介するので、自身の理由に合わせて変更してください。

職域変更が理由の場合

業界や職種、担当ポジションなどを変更したいという理由の場合は、現職とは異なる知識やスキルが必要になり、いわば初めての挑戦となることが多いです。ですので、以下のように転職理由を説明するのがよいでしょう。

「システムエンジニアとして就職後、プロジェクトを統括する責任者になることを目指して、プロジェクトリーダーを経験しました。その業務のなかで、プロジェクトマネジメントを行いながら金融系のシステム開発を完成まで導きました。応用情報技術者の資格を取得するとともに、マネジメントスキルも身につけました。

業務を行うなかで、セキュリティの必要性を強く実感し、システム構築においてセキュリティが未来の原動機になるという御社のビジョンに共感したことで、応募をさせていただきました。

セキュリティに関しては経験はあまりありませんが、現在独学で学習をしながら、資格取得を目指しています。入社後にはシステム開発やマネジメントの経験なども活かすことで、幅広い視点からクライアントの安全を守るシステムの実現に尽力したいと考えています。」

スキルアップが理由の場合

スキルアップが理由の転職の場合には、以下のような説明をするのがよいでしょう。

「現職では、システムエンジニアとして自社システム構築におけるコーディングやテスト、インフラ運用などを主に行っています。今後はプレイングマネージャーやプロジェクトマネージャーのような上流のポジションで働くことが目標なのですが、現職では経験豊富なメンバーが多いことや長く上流のポジションに空きが出ていないことから難しいと感じています。

そこで、幅広いクライアントのシステムを開発しており、より多くのプロジェクトやポジションがある御社を志望しました。これまでに身につけた、システム開発のノウハウとインフラ運用の経験を活かしてシステム開発で成果をあげるとともに、強みであるコミュニケーション力を活かして、マネジメントやプロジェクトマネジメントの分野でも御社に貢献できればと思います。」

現職の環境が理由の場合

現職の労働環境が悪いことが転職の理由の場合、以下のように説明するのがよいでしょう。

「現職では、残業や休日出勤などが常態化しています。業務後や休日に勉強会や交流会などに参加をし、トレンドのキャッチアップやスキルアップを行ってはいますが、業務が圧迫
してきてそれも難しくなってきました。全社的にこのような傾向であるので、会社側に改善の依頼・交渉を行ってきたのですが、受け入れられませんでした。

そこで、この会社では成長することが難しいと考え、転職を決意し、御社のビジョンに賛同したことで応募させていただきました。業務においても現職で培った〇〇のスキルや知識で貢献できるのではないかと考えています。御社は労働環境の整備がされていますし、社内勉強会などを積極的に行っていることも志望した理由のひとつです。」

エンジニアの転職面接での対策

ITエンジニアの転職理由の作り方や考え方はわかったと思いますが、転職の面接においては理由以外にも対策をしておいたほうがよいことがあります。

エピソードや数字を盛り込む

ITエンジニアの転職面接においては、数字を用いて定量的に表すようにしましょう。面接官はITエンジニアの実務に詳しくない場合がありますが、数字を用いることでどのような成果をあげたのかが簡単に理解できるようになります。

また、数字を用いることで信ぴょう性を増すことができます。どれくらいの期間、どのような業務でどんな成果をあげたのかを数字を交えて説明するのがよいです。「〇年連続で前年比〇%の増加を達成」などのように表現するのがよいでしょう。

どんなエンジニアになりたいかを考えておく

「どんなエンジニアになりたいか」は考えておくようにしましょう。というのも、この質問はITエンジニアの面接でよく聞かれる質問だからです。

この質問は、自社にどのように貢献してくれるか、どんなキャリアを目指しているか、キャリアプランをしっかりと考えているかなどの判断のために行われます。この質問によって、企業側の求める人材かどうかもチェックされるので、しっかりと考えておくのがよいでしょう。

嘘をいう必要はありませんが、企業の求める人物像に近づけるとともに、企業で実現できるエンジニア像を説明するようにしましょう。

エンジニアの転職はベスキャリで

ITエンジニアが転職をするときには、転職理由をしっかりと伝える必要があります。転職理由をきちんと説明できるかによって、採用担当者の印象は大きく変わります。転職理由を作るときには、良い印象を与えるとともに納得感のある理由を説明できるようにしておきましょう。

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