エンジニアの市場価値は知識やスキル、経験によって変わってきます。また、エンジニアの関わる分野では、新しい技術が次々に生まれますし、トレンドも早いスピードで変化してます。こういった市場の変化によっても市場価値は変わってきます。
だからこそ、自身の市場価値を高めるための知識やスキルを見極める必要がありますし、市場価値を高めるキャリアプランを考えなくてはなりません。
この記事では、市場価値の高いエンジニアの特徴や市場価値の高い職種を解説するとともに、市場価値を高めるための方法を解説します。調査データなどの客観的な事実をもとに、信頼できる情報を提供します。
市場価値とは?
まず、市場価値とはどのようなものかを定義しておきます。市場価値とは、市場においてどれくらいのニーズがあるかという指標のことです。ニーズが高いということは市場価値が高いことを指します。
そして、市場価値は需要と供給のバランスによって決まります。需要が小さいのに供給が大きいと市場価値は低いということになりますし、需要が大きくて供給が足りていないと市場価値は高いということになります。
人材においても同じことが言え、エンジニアの市場価値について考える場合にも、この需給バランスを考えなくてはなりません。
エンジニアの市場価値は高い?
エンジニアという仕事自体の市場価値は高いのでしょうか。
エンジニアの需給ギャップ
エンジニアの市場価値を知るために、その需給ギャップを確認してみましょう。経済産業省のデータの「IT人材の需給ギャップ」を見ると、2025年にエンジニアは36万人不足すると予測されています。ITニーズの拡大によりIT市場も拡大するにも関わらず、ITエンジニアの増加が間に合っておらず、需要のほうが供給よりも高くなるのです。
また、建設業界のエンジニアに関する調査でも、2022年の建設技術者の不足数は62,650人とされています。さらに、半導体エンジニアに関しては、1998年の約23万人から2019年には約17万人にまで減少し、有効求人倍率は5年で3.8倍まで上昇したという記事があります。
このように、あらゆる業界でエンジニアは需要が大きいのにも関わらず人材が不足しており、現在では需給ギャップが生じている状態なのです。各業界のエンジニアの職種や需要については以下の記事で解説しています。
将来のエンジニアの市場価値
では、エンジニアの市場価値は将来どうなるのでしょうか。
経済産業省の「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果」では、2030年のエンジニアの人材不足規模は約59万人となり、今後ますます深刻化すると予測されています。また、建設エンジニアについても、2030年には建設技術者が推計45,491人不足するとされています。
このように、エンジニアは将来的にも市場価値が高いと考えられます。
市場価値の高いエンジニアの特徴とは
エンジニア自体の市場価値は将来的にも高いことはわかりましたが、人材不足だからといってどのようなエンジニアも市場価値が高いわけではありません。エンジニアのなかにも、市場価値が高いエンジニアと低いエンジニアがいます。ここでは市場価値の高いエンジニアの特徴を解説します。
コミュニケーション力が高い
コミュニケーション力が高いエンジニアは市場価値が高いとされます。
現役ITエンジニアがITエンジニア志望者に身につけておいて欲しいスキルとして、もっとも多かったのが「コミュニケーション能力」でした。これは、エンジニアの仕事はチームで行うものが多いですし、顧客や関係部署ともコミュニケーションを行う必要があるからと考えられます。
エンジニアはプログラミングなどのスキルを重視し、コミュニケーションが苦手という人が多いことからも、コミュニケーション力があるエンジニアは市場価値が高いという結果となっていると思われます。
客先常駐エンジニア
エンジニアの仕事は「客先常駐」と「自社開発」に分けられますが、客先常駐エンジニアも市場価値が高いといえます。
客先常駐と自社開発双方の経験があるエンジニアへのアンケートでは、エンジニアとして市場価値が上がるのは客先常駐エンジニアと56.9%の人が答えています。その理由としては、「多様なスキル・情報が身につく」「顧客ニーズに応えた経験は市場評価が高い」といったことが挙げられています。
自社開発の場合、企画力などは身につきますが、顧客ニーズに応えるという経験はできませんし幅広いスキルというのは身につけにくいでしょう。
エンジニアとして市場価値を高めたければ、客先常駐の仕事を行うのがよいかもしれません。
需要の高い言語を習得している
需要の高いプログラミング言語を習得しているかどうかも、エンジニアの市場価値に影響します。
需要が高い言語を習得している人材は、企業が取り合いを行うことになるので、それだけ市場価値が高まるのです。
人材紹介会社のエンジニア採用支援担当者とITエンジニアへのアンケートを見ると、企業から求められる言語スキルとして多いものは、JavaやC言語、JavaScriptだということがわかります。ただし、JavaやC言語は企業が求めるよりも習得している人が多く、JavaScriptは企業が求めるよりも習得している人が少ないという状況です。
市場価値を高めるためにも、このように企業の需要に対してエンジニアが足りていない言語を学ぶのがよいでしょう。
先端IT、セキュリティのエンジニア
先端IT人材やセキュリティ人材も市場価値が高いといえます。
経済産業省の資料によると、ビッグデータ、IoT、人工知能を担うエンジニアや情報セキュリティ対策を担うエンジニアは、現在でも大きく不足しており、今後もその不足数は大きく拡大すると考えられています。
こういった分野では、需要は大きくなるにも関わらず、人材の供給が限られているので、今後も市場価値は高まるでしょう。
このように、特定の職種は大きく需要が高まり、市場価値が高くなる可能性があるのでチェックしておきましょう。次の章では市場価値の高いエンジニアの職種について解説します。
市場価値の高いエンジニアの職種
市場価値の高いエンジニアの職種を解説します。
AIエンジニア
AIエンジニアは市場価値が高い職種です。ChatGPTの普及にも見られるように、AIを活用したサービスの開発は近年活発になってきており、AIエンジニアの需要は高まっています。
AIエンジニアは、AIを利用したシステム開発を行う職種です。AIエンジニアには、AI技術の知識、機械学習、ビッグデータ分析、数学的知見などの高度な知識とスキルが求められます。
今後もAIの需要は拡大すると思われますし、高度なスキルを身につけた人材の育成には時間がかかることもあり、市場価値はどんどん高まっていくといえるでしょう。
IoTエンジニア
IoTエンジニアもまた市場価値が高い職種です。
IoTエンジニアは、家電製品や産業用機械などの機械がインターネットを通して様々な操作をできるようにシステムを開発し、組み込む仕事です。あらゆるモノがインターネットにつながり、多様な機能が付与されるようになったことで、幅広い製品の製造において専門知識を持ったIoTエンジニアが必要になりました。
IoTエンジニアには、IoTシステムの開発、組み込み技術、ネットワークやセキュリティの知識など幅広い知識が求められます。IoTエンジニアは需要が高いにも関わらず、高度な知識を持った人材が不足していることから市場価値が高まっているのです。
VR・ARエンジニア
VR・ARエンジニアも市場価値が高い職種です。
VR・ARエンジニアとは、「拡張現実」を指すAR、「仮想現実」を指すVRの技術開発に携わるエンジニアのことです。CGや実写映像などをユーザーが仮想的に体験できるVRや、現実世界に仮想現実のコンテンツを表示するARのコンテンツやシステムの開発を行います。
VRエンジニア業界は比較的新しい業界ですが、プログラミングだけでなく撮影技術や動画に関する知識など幅広い能力が必要になるので、高度なスキルと知識を持った人材が不足しており、市場価値が高くなっているのです。
セキュリティエンジニア
サイバー攻撃に対するセキュリティ対策が一般的になった現在、セキュリティエンジニアは市場価値が高くなっています。
セキュリティエンジニアは、サイバー攻撃による個人情報の漏洩、ウイルス感染などを防ぐために、サーバーやネットワークなどにおける脆弱性をなくし、セキュリティ対策を行う職種です。
セキュリティエンジニアには、サーバーやOS、ネットワークなどについての高度な知識が求められます。また、最新のサイバー攻撃に関する情報なども収集しなくてはなりません。そして、Webサイトやアプリケーションだけでなく、IoTやモバイル端末の普及などに伴って、セキュリティエンジニアがカバーすべき対象が広がりました。
このように、高度な知識が必要でありながらその需要が拡大していることから、セキュリティエンジニアの市場価値が高まっているのです。
半導体エンジニア
IT分野だけでなく、半導体に関するエンジニアも市場価値が高くなっています。
半導体エンジニアとは、あらゆる電気製品に組み込まれている半導体の製造開発に関わるエンジニアです。半導体自体の機能を設計したり、半導体の製造プロセスを最適化したりといったことを行います。AIやIoT、モバイル端末などの普及により、半導体が使用される製品は多岐にわたります。だからこそ、それらを設計・開発・運用できるエンジニアが求められているのです。
ただ、半導体エンジニアには、半導体に関する深い知識とエンジニアリング能力が必要になり、まだまだ人材が不足しています。それによって半導体エンジニアの市場価値が高まっているのです。
半導体エンジニアについては、以下の記事で詳しく解説しているので参考にしてください。
建設エンジニア
建設エンジニアも市場価値が高まっている仕事です。建設エンジニアとは、建設工事や土木工事において、設計や施工管理、監理、保守管理などを行う様々な技術者の総称です。例えば、建築士や施工管理技士、測量、積算、CADオペレーターなどの職種などがあります。
建設業界では、働き方改革関連法が2024年4月から適用され、時間外労働の規制が行われます。それによって、これまで時間外労働でこなしていたような業務が溢れてしまい、より多くの建設エンジニアを採用しなくてはならなくなっているのです。
需要が大きく増えることで、建設エンジニアの市場価値が高まっていると考えられます。
建設エンジニアについては以下の記事で紹介しています。
エンジニアの市場価値を高める方法4選
市場価値の高いエンジニアの職種に就くのもよいですが、市場価値をより高める方法も知っておいたほうがよいでしょう。
1.スキルアップを行う
エンジニアとしての市場価値を高めるにはスキルアップを行うのが大事です。
エンジニアの評価はスキルによるところが大きいです。どのような経験をし、どのようなスキルを身につけており、そのスキルを用いてどのように貢献できるかが評価されるのです。
仕事の紹介を行う場合に重視されるのは、技術スキルの汎用性や経験業務の幅広さ、技術スキルの粒度であるというデータもあります。だからこそ、幅広い技術スキルを身につけなくてはなりません。
また、複数の技術スキルをかけ合わせることで、より市場価値を高めることができます。スキルアップを行うことで、先端IT技術者になるというのもよいでしょう。
2.コミュニケーション能力を高める
コミュニケーション能力を高めるというのも、市場価値を高めるのに有効です。
採用決裁者へのアンケートでは、中途採用時の評価点としては、60%の人が「コミュニケーションスキル」と回答しました。
「ITエンジニアに求めたい定性要素」としても、「コミュニケーションスキル(36.0%)」や「ビジネスマナー(34.0%)」「協調性(26.0%)」とされており、コミュニケーションに関わる能力が重視されていることがわかります。
市場価値を高めるためにも、コミュニケーション能力を身につけるのがよいでしょう。
3.資格を取得する
市場価値を高めるために、資格を取得するのもよいでしょう。資格を得ることでスキルや知識を証明することができますし、それだけ他の人材との差別化を図れ、評価を得ることができます。
また、高年収になるほど資格保有率が高いという調査結果があり、資格によって市場価値が高くなる傾向があることがわかります。
年収600万円以上のグループで資格保有率が高かった資格である、「応用情報技術者」「情報セキュリティスペシャリスト」 「データベーススペシャリスト」 「プロジェクトマネージャー」などを取得するのもよいでしょう。
4.転職する
転職をすることも、市場価値を高めることにつながる可能性があります。
一般的にエンジニアは転職を行うことで年収が上がる傾向にあります。4回以上転職するエンジニアは、それよりも少ない回数の転職をしているエンジニアよりも年収が高かったというデータがあります。年収が高いということは、それだけ需要が大きく市場価値が高いということでしょう。
これは転職をすることで、ひとつの企業だけでなく様々な企業で働くことで、幅広い経験を積んでおり、それだけ幅広いスキルを身につけていることが評価されるということだと思われます。
参照:ITmedia NEWS『「ITエンジニアは転職した方が収入が増えるバグ」、数字からも明らかに 生涯年収に1000万円の差』
エンジニアの就職・転職はベスキャリで
エンジニア自体、市場価値の高い仕事ですが、そのなかでも市場価値を高めることができます。市場価値の高い職種やポジションに就くことで、より良い条件や環境を手に入れることができるはずです。市場価値の高いエンジニアになりたいのであれば、今回紹介したような特徴のある仕事、市場価値の高い職種に就きましょう。
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